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クラゲの触手

今回の気球はクラゲ。クラゲと言えばヒョロヒョロと揺らぐ無数の触手が特徴的だが、これまでその素材をどうするか考えあぐねていた。シート状の素材だとそれらを筒状に貼り合わせる手間がかかる。何十本となるとなおさらだ。クラゲの写真を見て、傘と触手の幅の比率を計算すると、クラゲの種類にもよるが、傘幅16mの場合だと触手幅は40センチほどになる。

素材について総合的に考えると、理想なのは幅40センチ程度で数百mもの長さの筒状のビニール。スーパーなどの清算後の台にあるロール状のビニール袋(おばちゃんが巻き取っていくことから通称、「おばちゃんビニール」と呼んでいる)のミシン目と熱接着がない状態が理想なのだが、なかなか見つからない。

困っていると、毎回、講座に来てくれている父母の方の奥さんが、そのような素材を大量に使ったことがあるという。残りを持ってきてもらうと幅36センチの程よい幅で500m巻きのビニール素材だった。この素材、クリーニング屋でYシャツをパックするときに使うものだという。なるほど!まさかクリーニング屋にあるとは気づかなかった。

サンプルに空気を入れて中学校の4階の窓から垂らしてみると、ちょうどいい塩梅でなびいてくれる。2010_11_28_01.jpg

さらに、クリーニング屋の知り合いがいるから聞いてみるという話までに発展。とんだジャンプだ。

色を変える

クラゲを飛ばすにあたって、演出上、中に設置する照明の色を変えたいという案がでてきた。毎回使っている照明はスタジオ用のハロゲンランプ1000Wという強烈なもの。熱量も多く、紙が触れると紙が焦げ穴ができるほどの熱さだ。

通常の白熱灯の色なので、まずは色をつけることから考えなければならない。周りをセロハンで囲うとなると熱で溶ける可能性がある。という訳で、メンバーのひとりが、東京舞台照明からカラーサンプルを注文してきた。

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日光でグラシンに当ててみるとなかなかきれい。紙を斜めにするとゆがみがおきる。サンプルだけで結構遊べる。ここから、イメージするクラゲの色を決めていく。

あとは色をどうやって変えるか、それが課題だ。

煙を入れてみる実験

クラゲの中に煙を入れるという案がありましたが、ここ数回の講座では、あまり効果として現れにくいのではないか、という点から煙を入れずに飛ばす方向で考えられていました。が、実際のところやってみないとわからない。そんなわけで、先日の講座が終わってから近くの公園で実験してみました。

サンプルとして頂いたクリーニングのビニールに身近な煙を入れて、後ろからライトで照らしてみます。

2010_11_28_02.jpgすると、思いのほか目に見えて現れました。言うまでもなく、右が空気のみで左が煙を入れた状態です。透明感がまるで変わり、光の鋭さも和らいでいます。煙を入れるとなると費用がかさむ上、フライト時にやることは多くなるのですが、満場一致で入れることに。

終わったあとに言った一言もそろいました。
「やっぱり何事もやってみるもんだね。」

カラーチップ

煙を入れる実験では、メンバーのひとりがたまたま持っていた照明用カラーフィルムの小さなチップで色を変えました。今後も使うことを考え、大きなものを購入しました。

2010_12_02.jpg記載されている熱特性を見ると、使用可能温度が150℃、通常使用温度120~130℃、融点260℃、引火点390℃、発火点508℃とありあます。

現在、使用している電球は1000Wのもの。グラシンと接触すると焦げたり穴が空いたりしますが、発火したことはありません。紙の燃える温度は300℃、焦げる温度は120℃ほどなようなので、カラーフィルムも電球に接しなければ変形することはなさそうです。

ふくらむ講座11回目

ついに12月になってしまいました。あっと言う間にあと2週間でフライトです。
今日の制作目標は展開したときにできる形を全て作る予定だったのですが、やはり理想的な目標だったためか、かなり急いで集中した制作ができましたが、パーツ完成には至りませんでした。

2010_12_06_01.jpg来週にはビニール部分だけでも袋状にならないと、確実にテスト飛行はできなくなります。思えば、今回は2重構造なので気球2つ分の貼り合わせ量。テープを貼っても貼っても同じ作業が続きます。単純作業が延々と繰り返し、完成して膨らましたときにしか形が見えないのが気球作りのつらいところ。でもそうだからこそ、最後に感動できるのも、また気球の醍醐味です。

2重構造の内側のグラシン部分に空気が通るための穴をあけて、そこに不織布を貼る案がありました。空気を通す不透明な素材を貼ることで、中央にある電球の光を柔らかくするためです。そのサンプルを持っていくと、とりあえず被って光がどれほど和らぐか見てみます。

2010_12_06_02.jpg一見、ふざけているようにも見えますが、割とまじめにチェック中。空気の通りもよいのでやはり不織布を貼ることにしました。

煙に呑まれる部屋

前回の煙を入れる実験で、煙を入れたほうがいいだろうという結果になり、フォグマシンを注文しました。小柄で重さも2.2kgのわりに毎分85㎥の出力ができる優れもの。ブルーの色が不人気なのかわかりませんが、なぜかこれだけ安くなっていて5000円ほどで購入しました。2010_12_07_01.jpg

まずは実験。いつもの薄汚い部屋でフォグマシンを試してみます。
リキッドを入れて3分ほどのウォームアップを待つと、ポショポショと煙が出てき始めました。ボタンを押すとブシューっと勢いよく煙が出てきます。なるべくフライトと同じ条件にするため、いつも使っている電球をつけ、送風機で煙を拡散させます。

みるみる辺りが見えなくなります。記録取らねばと思いカメラを手に取ろうとしましたが、既に1m先も見えづらい状態に。「カメラ、カメラ・・・」手探りでバックを探し記録します。

2010_12_07_02.jpgこれは想像以上にスゴい。始めはマックスまで噴射し続けるつもりでしたが、始めてからわずか10分ほどで、これ以上続けるのは何かのヤバさを感じ、停止させます。いつもの部屋がここまで幻想的になってしまうとは驚きです。数年前に、濃霧の中で海を見に行ったことを思い出しました。ただ、霧と違うのは匂い。甘く焦げた匂いも充満します。しかもなんだか手や服にかすかなベタつきも感じます。消防訓練などでも使用され、人体には害はないそうですが。

実験を終えて煙を出すのがまた一苦労。送風機をふたつ起動させ、さらに板で仰ぐこと約15分。ようやく部屋がいつもの汚さに戻りました。

フライトのお知らせ

フライヤー表.jpg『海月』フライトのお知らせです。
今月19日(日曜)18時~、東京都東村山第一中学校グラウンドで『海月』を飛ばします。
9月から中学生が主体となって企画から考え、制作した気球です。
どなたもお誘い合わせの上、御来場ください。

なお、紙製の気球のため、天候や風などの関係で延長、延期になることがあります。また、御来場される方への駐車場は設けてありませんので、あらかじめご了承ください。


■日時:2010年12月19日(日曜)18時~
■場所:東京都東村山第一中学校 校庭

フライヤー裏.jpg

今年は中学生が何をどのように飛ばすか、という企画内容から話し合いをし、形や演出も考え、制作を行いました。形態がクラゲに決定し、さらに「なぜクラゲが空を飛ぶのだろう」という疑問から、クラゲが月に会いに行く物語が創作されました。そして、その物語に添った演出を考えることへと発展していきました。

クラゲは「海の月」と呼ばれています。それを知ったクラゲは、空に浮かぶ月が気になり、ある夜、ついにクラゲは暗い海を飛び出して、月に会いに行きます。




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ビニールの接着実験

今回のクラゲ型気球は、2重構造になっていて、球体の中に球体がある構造になっています。

2010_12_10_00.jpg図のように下から熱気を入れると、左の図だと内側の球体は膨らみますが、外側の球体には空気が通りません。なので外側の球体にも熱気が回るように、右図のように内側の球体に穴を開けます。これで外側の球体は膨らみますが、そうなると、内側の球体の上部が垂れ下がってしまいます。なので、内側の球体と外側の球体とを、ロープで数十カ所をつなげる必要があります。

問題なのは、外側の球体の素材であるビニール(農ポリ)。テープ類の接着が弱いという難点があります。ロープをどのように貼れば最小限でくっつくか実験します。

農ポリにスズランテープのような幅の広いテープを梱包用テープで接着し、さらに井の字型にテープを貼っていきます。ビニールに付けられたスズランにロープを結びつけるという作戦。何重にもテープを貼り、引っ張ってみると感覚では10kg以上の重さに耐え、剥がれないようです。ここから貼り重ねるテープの枚数を減らしていきます。

2010_12_10_01.jpg何度も実験をして、最終的にはここまで少なくなりました。分かりにくいですが、スズランの両端をテープで止め、そのスズランに紐を通してから、スズランと直角に交わるようにテープで貼るというやり方。これで引っ張ってみます。

2010_12_10_02.jpg夜のテンションで3人かがりで引っぱり、ビニールを押さえます。引っ張るのは皮手袋をしていて紐が指に食い込むようで
「イタイ、イタイ」
と連呼し、ビニールを押さえる2人は
「もっと!もっとー!」
とけしかけます。
接着面は充分持ちこたえました。
これでたぶん、強度は大丈夫でしょう。

ふくらむ講座12回目

ついにフライトまで1週間。制作は順調に・・・遅れています。

視聴覚室の中ではグラシン部分のゴア(メロンを12等分して食べたあとの皮の形)を作り、廊下ではビニールのゴア接合は廊下で貼り合わせます。これまで貼り合わせたビニールを広げてみると驚くほど大きく、4階の廊下の半分以上を使っての作業。日が差す視聴覚室と違い、暗く寒く、冷たい廊下でテープの音が響きます。

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12時が過ぎ、昼食の時間。今年は炊飯器を持ち込み、ご飯を作ってみんなで食べています。これまで、おにぎりから始め、手巻き寿司、カレー、などを作ってきました。最近は制作を優先するため、炊飯器に米と一緒に入れると炊き込みご飯になる『~のもと』を食べています。炊ける寸前に、とてつもなくいい匂いが立ちこめて、「あと何分でできるんだろう」と、炊飯器を行き来します。
ちなみに今日は『鮭釜飯のもと』。
2010_12_11_02.jpg2010_12_11_03.jpg

午後は出来上がったグラシンのゴアの接合。6時くらいまで制作を続け、ビニール部分の半球がふたつ、グラシンの半球がひとつできました。
2010_12_11_04.jpg最後に電球にフィルムをかぶせて、どのような色になるか実験しました。黄緑色の光はわりときれいに見えるのですが、青のフィルムは光が弱くなりすぎてしまい、光がよくわかりません。再検討が必要なようです。

ふくらむ講座13回目

海月のフライトまであと1週間となりました。まだ形にはなっていない状態。来週の土曜18日も制作するとしても完成するか不安です。ということで急遽、本日日曜も行うことになりました。

昨日に引き続いてグラシンの半球作りを視聴覚室で行い、廊下では内部のワイヤリングの取り付け部の制作をします。『ビニールの接着実験』で説明したように、外皮のビニール球体の内側と内皮のグラシン球体の外側をロープで計37本、結びつけるカ所はその倍の72カ所あります。『ビニールの接着実験』のワイヤー取り付け部分を作っていきます。

2010_12_12_02.jpgお昼になり、いつものように自炊した昼食。今日は取り釜飯です。父母にも来て頂いたおかげで鮭ご飯や焼きそばパン、デザートのリンゴやコーヒーなど、いつもより豪華な昼食。食べながらフライト時に流すBGMを決めていきます。『海の中の場面』、『飛んで行くとき』、『月に会ったとき』、『帰ってくるとき』の4曲が決まりました。

2010_12_12_01.jpg午後には、半球のグラシンと半球のビニールとの接合。ここは最も力がかかる部分なので外側と内側からテープで貼っていきます。2010_12_12_03.jpgビニール+グラシンの半球ができたら半球と半球を貼り合わせる作業です。これで球体となりクラゲの形ができるのですが、大きいために右半球と左半球の貼り合わせ位置を合わせるのにも一苦労です。辺を辿っていくとどうもおかしい。確認の末、グラシンとビニールとの接合時に裏表を貼り間違えていたことに気付きました。

ここで5時近くになり片付け。いつも道具や素材を置かせてもらっている視聴覚準備室がクラゲでいっぱいになりました。

来週のフライト前日の制作日が追い込みです。