埼玉県、飯能市にある自由の森学園中学高等学校の学園祭(後夜祭)で、気球を飛ばすという情報を聞き、行ってきました。自由の森学園はふくらむの発足メンバーの母校です。
去年は『はらぺこあおむし』の気球を飛ばしていましたが、今年は何を飛ばすのだろうと考えながら見ていると、クジラでした。
クジラと言えば、ふくらむでも5年前の2008年にシロナガスクジラの子どもの実寸大を飛ばしました。気球は縦に長い形状であれば安定するのですが、横に長い形は飛ばしづらくなります。ましてや、クジラのように頭が大きく、尾びれに近づくほど細くなる形状は気球にして飛ばすには非常に難しい形です。
さらに、クジラの写真を見ると意外と細長く、どうやって体積を得るかが課題でした。2008年につくったときも、何度も設計と模型制作を繰り返し、実際のクジラに近づけながら、子どものクジラという印象を与え、さらに飛ぶことができる形を決めるのに苦労しました。
クジラが膨らみ始めると全貌が見えてきます。「細い!!」というのが最初の印象。実際のクジラに近づけるほど、浮力はつきにくくなります。長い時間をかけてバーナーで内部の空気を暖めていました。
また、熱気は「上」に向かうため、頭を下げて尾に近いところからサブバーナーで尾びれを暖め、全体に熱気が行き届くように配慮していました。
一度フライトを試みましたが、背に穴があき一時補修。その後再フライトを試みます。後夜祭も終わりに近づき、時間が差し迫っていました。指示する声が波のようにクジラの周囲で交差し、ぶつかり合い、弾け、その言葉が必死に飛ばそうとする一人ひとりの行為に同調していきます。
最後のフライトに挑みます。全員が手を離すと、ゆっくりとクジラが浮き上がり、夜空を泳ぎます。見ていた人からも思わず拍手が起こりました。
数分の遊泳を終え、ゆっくりとクジラが地上に戻ってきました。
フライト後に関係者から話を聞くと、前日に体育館でテスト飛行をしたものの、浮力が足らず完全には飛ばなかったそうです。尾びれに熱気を届かせるため、尾びれを高い位置で固定し、内圧を上げ形状をキープするなど、考えられることは全てやったということでした。その執念が、難しい形状であるクジラを空に泳がす力になったのだろうと感じます。
全ての制作者の方、素晴らしいフライトをありがとう。