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擦過傷完治

11月1日に「はらぺこあおむし」の気球のフライトを手伝い、両手と左足をロープで擦りむいた傷が、ようやく完治した。
手は3週間ほどで全ての絆創膏が取れたのだが、怪我をしたときには大したことではないと思っていた左足の回復が思いのほか時間がかかった。

このような怪我を体験すると、日常的な動作がどれほど複雑で、特に指には意外と力がかかっているかがよくわかった。

普段は自分の外側の世界に意識しているが、怪我や病気をすると、自分の外側の世界より、自分自身に意識が向いてしまう。

とにかく完治するのに2ヶ月が長く感じた。そんなことを言うと、アインシュタインからは

「熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。ところがかわいい女の子と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない。それが相対性というものです。」

と言われてしまいそうだ。

おつかれさま2012

今年も今日で最後。

2012年のふくらむの活動を振り返ってみる。

3月『かげから』
5月『色+色』
9月~『春を蒔く人(仮)』の話し合い

飛ばしたのはこの二つ。夏に東北の海開きイベントという話もあったがボツになってしまった。
2011年が色々あったので、今年の動きがゆったりと感じる。

去年から中学生との制作が、年をまたいで年度末に飛ばすスケジュールになった。
やっぱり気球を作り途中のまま年を越すというのは、まだ慣れない。

作り途中で、とりあえずになってしまいますが、2012年、おつかれさまでした。

長い体験へ

朝日新聞『絵本作家 荒井良二さん(56)』
山形市出身の絵本作家荒井良二さんに、この1年を振り返ってもらいました。東日本大震災の被災地でのワークショップなども精力的に続ける荒井さん。新年へのメッセージを込めた年賀状代わりのイラスト作品も描いてくれました。
東日本大震災の被災地でワークショップを行った荒井さんはインタビューで「現地に行き、被災地の人と交流を持った活動がしたいと思いました。物資と違い目に見えない支援だけれど、10年、20年たってワークショップの記憶が参加した人の何かの手助けになればいいと思っています。」と語っている。

荒井さんの言うように、体験というものは子どもたちに対して、即効的に響くものではないと思う。気球を制作していて、30歳前後の僕らと小中学生の生きている時間に差があることも実感する。どのような体験も子どもたちにとっては生きている間の僅かなものだ。だからこそ、子どもたちが十数年後に「そういえば、あのときこんなことがあったな」と思い返してくれれば、そして、それが希望に繋がってくれれば、とても嬉しい。

夢の実現

キリンのどごし生の「夢のドリーム宣言」


最近のキリンのどごし生のcmをなんとなく見てしまう。とくに最初の飛べなさそうな飛行機を必死にこいでいる白黒のフィルムには妙な懐かしさを感じる。

気球を作っていることを他人に話すと「夢があるねー」と言われることが多い。確かに気球は地上を離れて優雅に浮遊する。現実から少し離れた状況や、実現する可能性が低い行為を「夢」と呼ぶことが多いのだと思う。

しかし、気球の下では「ロープ引っ張れ!」「破けた!!」などの罵声が交わされている。気球を完成するまでも試練を避けては通れない。

そう考えると、「夢を叶える」というのは問題を具体的にすることなのだろう。

剪定

庭の木が1年間で鬱蒼としてきた。

何もしていないのに植物はなぜ、こうも伸びるのだろう。
アンズの枝は1メートル以上も大きくなる。

2013_1_12_01アンズ剪定.jpg
庭師に頼むべきだろうが、10万円以上かかってしまうので昨年から自分で剪定をやっている。とりあえずアンズの木の枝をノコギリで切り落としていく。アンズの剪定の基本は「花を楽しむか」「実を楽しむか」で剪定の仕方が違ってくる。アンズ酒を作るために、枝をかなり短めに剪定し、多く実るようにすることにした。

2013_1_12_02アンズ剪定.jpg
自分で剪定をすると、切るだけでなく捨てられるように、まとめるのもひと作業だ。大方の枝を切り落とし、切り取った枝を束ねてみると相当な量になる。

このアンズの枝は庭の土の養分を吸収して伸びている。切った枝を廃棄することは、庭にある養分を減らすことになる。枝を細かく切り刻んで庭に還すのが土にとって自然なのだろう。でも、それは大変なので、枝を捨て、肥料をまく。

それにしても、なぜ伸びるのか。このまま枝を伸ばし続けると、根も負けじとどんどん伸びて、家を飲み込むほどの木になるかもしれないが、それはちょっと困る。逆にアンズとしては伸ばさないと困るから伸ばすのかもしれない。双方が困る最悪のパターンは、木が大きくなりすぎて倒れて家が潰されること。まさに共倒れだ。だからちょっと切らせてほしい。

早朝から雪が降り始めた。わずか数時間の間に、屋根もアスファルトも芝生も、風景が白く染められていく。

雪の積もった町は夜の暗さも穏やか。雪が光を反射し均等にしてしまうせいだろう。逆に音は雪に吸い込まれ、孤独感を感じるほど響きがなくなる。

歩道では足跡が足跡をつなぎ、線になり、道ができる。誰かが落とし、誰かが拾って植え込みに置いたハンカチにも雪が積もっていた。

雪はいつも素通りしてしまう感覚を気付かせてくれる。

10年ぶりの人型

振り返ると、人の形をした気球を作るのは、ふくらむとして活動してから初めてのことになる。
最後に人型を作ったのは、ふくらむ結成のきっかけとなった、2003年の『アトム気球プロジェクト』。アトムの誕生日にアトムの気球を作って祝おうというプロジェクトで、27メートルのアトムを制作した。

企画が立ち上がってからフライトまで、わずか1ヶ月という大忙しのスケジュールだった。通常、設計は制作が始まる前までに終わらせなければならないが、すぐに作業が始まったため、制作をしている傍ら設計をしていた。今になって思い出すと、成功したことが奇跡的に思う。

ふくらむの気球は複雑な形を作っていないため、今回の企画は10年ぶりの複雑な形となる。

気球の設計について(1)

ふくらむがこれまでに作った気球の中で、最も設計に苦労したのが2008年の『仔鯨』だろう。

クジラの写真を集め、三重県のクジラ博物館に行くなど、リサーチにも時間をかけた。粘土で模型を作り、それにピンを打ってX.Y.Z座標をだし、パソコンに入力。

気球の浮力は体積が大きく関係するため、体積が小さな場合は全体のサイズを大きくする必要があるが、このとき作っていたクジラは「離乳期を迎える15メートルの仔鯨」だったため、サイズを増やすことができず、いかに「太らすか」という課題に直面した。

しかし、太くし過ぎるとクジラには見えなくなってしまう。紙で模型を作っては再考し、また模型を作るという作業が繰り返された。

熱気球の浮力について

熱気球の浮力は体積と温度、そして表面積で決まってしまう。

例えば、球体で外気温が摂氏15度で、気球内の温度が45度の場合、

直径5メートルの球体の浮力は6.7キログラムだが、
直径10メートルの球体の浮力は54キログラムになる。

なぜ、こんなに変わってしまうかというと、

直径5メートルの球体の体積は約58立方メートル
直径10メートルの球体の体積は約466立方メートル

となるように、体積は3乗で増えるためだ。

しかし、浮力を算出するうえで、厄介なのが表面積の関係。
例えば「ウニ」にように表面積が大きい形状だと、気球内の熱がどんどん冷やされていく。

バイクのエンジンにギザギザのラジエターがついているのと一緒だ。
逆に、寒いときに体が冷えないように、腕を組んだり、丸くなろうとするのは、表面積を減らそうとしている。

「無駄」という蓄積の基盤

先日、土曜日の話し合いで、3月に飛ばす気球の企画内容が大きく進展した。

話し合いとしては約5回。一日およそ3時間から4時間話しているので、総時間数にすると約18時間。

いつも思うのは、企画について長い間話していても、案が出てこないときはまったく出てこないが、逆に決まるときは一気に決まってしまう。それは、これまでの『海月』や『記憶の種』でも同じだった。

やはり、結論が出ないような「無駄になってしまう話し合い」の蓄積があってこそ、アイディアは出てくるのだと思う。