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吉増剛造

7月30日から8月19日まで、ポレポレ東中野で吉増剛造の『予告する光 gozoCiné』が上映されている。毎日、違う作品を上映し、トークイベントも頻繁にある。

以前、吉増剛造の講演を聞きに行った。ペンを数十本、音声レコーダ、ビデオカメラ、石(?)でできた楽器を常に持ち歩いていることから話が始まった。「教える」という言い方ではなく、独り言のように、囁くしゃべり方に耳をすます。映像を見ながら話すときも「解説」ではなく、自らの映像を読み解こうとするように言葉を置いていく。映像の中でも同じような独り言を言っているので、どちらが今、話しているのか分からない。

講演の終盤の質疑応答になると、質問者の「なんと言ったらいいのか分からない」という言葉さえも拾い、話を掘り起こす。それまで聴講側には向けなかった目が、段々と火を灯すように一人ひとりを見つめる。10秒以上、目が合っても離してくれない。でも、やさしい言葉を渡す。「燃える」の詩を書いたときには、もっと燃え上がるような目をしていたんだろうな。

ワッツタワー

「プンクトゥム・タイムズ」という新聞に吉増剛造が撮ったワッツタワーの写真が載っている。このワッツタワーはロサンゼルスのワッツ地区にある。1921年から1954年の33年をかけ、サイモン・ロディアという日雇い工事現場の労働者が一人で作ったものらしい。鉄筋をセメントで固め、ビンやタイルの破片を拾って、それらを埋め込んで作られた塔で、高い塔は30メートルにもなる。

サイモン・ロディアは完成後、塔に対して子どもの嫌がらせや苦情などがあいつぎ、タワーを隣人に譲ってワッツを去り、狩るフォルにあのマルチネスに移り住む。ワッツを去ってからは塔を見ることはなかったそうだ。この塔をロサンゼルス市は、不許可建築として取り壊そうとしたが、映画業界人、美術研究家、建築家によって守られ、1990年にはアメリカ国定歴史建造物に指定された。

サイモン・ロディアは、なぜ塔をつくるのかという質問に「何か大きなことをやるべきだと思った。だからやった」と答えたそうだ。

三重県で『虹の泉』をつくっている東健次も同様、こういうことをやっている人へ「なぜつくっているのか」と問うと、いたってシンプルな答えが返ってくる。

ヘンリー・ダーガー

今月16日まで、へンリー・ダーガーのドキュメント映画が、渋谷、シネマライズで行われている。

ヘンリー・ダーガーとは1892年にシカゴで生まれ、12歳で知的障害児の施設に入れられるが16歳でその施設を脱走。施設からシカゴまでの260kmという距離を徒歩で帰郷し、清掃の仕事をしながら家では15000ページを超える小説を書いていた人。

その小説『非現実の王国で』には挿絵として描かれた数百枚の絵もあり、アウトサイダーアートの代表として挙げられることも多い。80歳で病気になり、入院をしたことで、彼の作品が初めて発見された。そのため彼に関しての記録は3枚の写真と日記、そして大家や近所の人の証言しかなく、この映画は、それらと小説の挿絵を構成しながら、彼の生涯を辿る。

改めて知ると圧巻する。
生涯、ほとんどの人と会話をすることなく、変人、奇人扱いをされながら、孤独にひとつの小説を書き続けた。彼にとっては小説の中の世界の方が日常的な世界だったのだろう。

死を前に迎えた彼に、部屋にあった作品のことを話すと、彼は殴られたかのように白目を向きながら、「もう手遅れだ」と言ったそうだ。小説の世界は、自分だけの世界にしたかったのだと思う。彼にとって、小説を他者に見られるというのは、自らの世界に土足で入られたことと同等なのかもしれない。そう思うと彼の作品を見ることが申し訳なく思う。

紙わざ大賞2011

紙を使った創作作品「紙わざ大賞」 まさに"神業"

今年で21回目となる、紙を使った作品の展示「紙わざ大賞」の入賞作品展が銀座の十字屋ホールで開かれているそうだ。紙を素材にどのようなものでもよいので、平面や立体、レリーフ作品など様々。

過去の作品も公式サイトで観覧できる。
歴代の大賞作品

新しいパスタ

2011_9_30_01.jpg数年前から通いはじめ、今や常連と化しているほど頻繁に行っている、小川にあるパスタ・カフェ屋『椰子の実』に行くと、新しいパスタが完成されていた。シラスとわかめと海苔をふんだんに使った『しらすとわかめの磯の香りパスタ』や、たぷりと明太子とバターを使った『クリーミー明太子』など、7.8つのパスタが新しいメニューになっていた。震災で食材が手に入りづらくなったことから、新しいメニューを考えたそうだ。そして新しいパスタを考えるには半年以上かかるらしい。

2011_9_30_02.jpg何度食べても、この『椰子の実』は尋常じゃないこだわりが感じられる。「作品を戴く」という感じだ。

オーストラリアの巨大なもの

オーストラリアのあちこちにある、でっかいオブジェを集めてみました


このブログでも日本に点在する巨大なオブジェを紹介しているが、自転車世界一周を行っている周藤卓也がオーストラリアで見つけた巨大なものを紹介している。

数年前、北海道に行ったときにもコンビニなどの看板が関東にくらべ大きかったことを覚えているが、生物の進化と同じように、大きな大陸では人が作るものも大きくなるように思う。

フレデリック・バック

書き忘れていたことがひとつ。

今月の始めまで、現代美術館で『フレデリック・バック展』が展示されていた。フレデリック・バックといえば、『木を植えた男』や『大いなる河の流れ』のアニメーションで知られている。

僕が初めてフレデリック・バックの作品に触れたのも、『木を植えた男』の絵本だったと記憶している。たぶん小学生くらいのとき。内容は理解せず、しかし、鮮やでフンワリとしたやさしい色に目がギュルっとした感じを覚えている。

『フレデリック・バック展』では、アニメーションの原画だけでなく、彼の10代からの絵画が展示されていた。やさしい絵の印象だったが、若き頃の絵は力強く、見ていて目眩がするほどエネルギーを感じた。強烈だった。(その晩、展示を見たせいか分からないが、鼻血がでた。)その作品の中に、屠殺場の風景や、漁猟の水揚げの絵が数点あった。はやり、その頃から自然と人間の関係について考えていたのだろうと思う。

羽ばたき飛行

オランダのエンンジニア、Jarno Smeetsによる『Human Birdwings』という羽ばたいて人が飛ぶプロジェクトの動画がありました。

翼を羽ばたくと背面にある装置が連動して、羽ばたく力を増強させることで飛んでいるようです。



羽ばたいて人が飛ぶという試みは大変面白いのですが、動画を見ると、怪しい動きが気になります。羽ばたく動きがCGっぽい。。テイクオフ前と後にカメラがフレームアウトするのも不思議なところです。

彼のホームページにには制作のプロセスが記載されていて、とくに重量に悩まされたと書かれています。

写真で見る限りですが、骨組みとなるパイプは直径5.6センチほどが一本。かなり細めです。重量や強度、太さを考えると、おそらくカーボン製でしょう。翼型を形成するリブはスチレンボードのような素材で、5mm~7mm厚。全部で6つ。うち2つはハーフリブです。

機体を一人で背負え、走ることを考えると、せいぜい20キログラム程度でしょう。気になるのがパイロットの重さ。他の人との比較でしかありませんが、かなりの高身長であることがうかがえます。

それらを合わせた重量(おそらく100キロ程度)を、羽ばたく力で飛ばすことができるのか。背中の装置による力の増幅が未知数なので、分かりませんが、少なくともそれらを細いパイプで支えるというのは難しそうです。

一番気になるのが、羽ばたいたときに風が起きていないことです。ハトの離陸などを見ても、落ち葉をまき上がらせるほど風がおきます。この羽ばたき機の大きさほどの翼ならより強い風が地面を仰ぐことになりますが、そういった印象はありません。

地を離れたことを願いたいのですが、もう少したくさんの視点から捕らえた映像が見たいところです。とはいえ、本当であってもそうでなくても、このような映像を見ることで、空の飛び方の可能性が広がると感じることにワクワクします。