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書籍紹介『飛行の古代史』

凧の起源でも参考にしたベルトルト・ラウファー著/杉本剛訳の『飛行の古代史』を紹介。

ベルトルト・ラウファーはアメリカの東洋学者・人類学者。原本は1928年に出版されています。

本屋の飛行についてコーナーで、最も多いのが戦闘機などの写真集や航空力学についての書物。飛行の歴史についても、多くは1903年のライト兄弟の初飛行から始まるものが多い。

そういった中で、古代史、特に東洋について書かれているものは、この本以外に見たことがないほど珍しい内容です。

「はじめに」の一文を抜粋します。
本書で証明しようとするのは、前記(「飛行の実用性は、試作と議論の問題に留まっており、空想物語の主題となりはじめたばかりで、理論的研究計画の目標とされはしたものの、実際に試みられることはまずなかった。」)のあらゆる特徴が、ヨーロッパ航空史の黎明期よりさらに数世紀前の古い時代の東洋に見られたということであり、しかも、われわれの時代の航空技術の原理の根底にある基本理念は東洋にその源をもっている。
飛行の歴史は西洋の「イカロスの翼」同様、東洋でも伝説からはじまり、中国やインドの文献に基づいた飛行記録が書かれています。

原本は「OPEN LIBRARY」というサイトでも見ることができます。

『ナスカ 砂の王国』

楠田枝里子さんが書いた『ナスカ 砂の王国』という本があります。楠田さんと言えば、テレビ番組の司会で目にするアナウンサーです。

この本を読むまで、楠田さんのことを「元気なおばちゃんだなぁ」というくらいにしか思ってなかったのですが、読んでみて、非常に努力家で情熱的な人へと、それまでのイメージが完全に払拭されました。

この『ナスカ 砂の王国』という本は、ナスカの地上絵を研究したマリア・ライヘの生涯について綴った本です。

楠田さんは、ある雑誌で1枚の写真に出会います。それは地上絵が書かれた砂の平原で、女性が作業をしているシーンでした。そこで楠田さんは「いつか、きっと、私はこの人に会いに行く」と直感します。作業する女性の名がマリアという人だとわかり、数年後に彼女に会いにいきます。ペルーでマリアさんと地上絵に出会い、ますます、気持ちが寄せられた楠田さんは、その翌年には、マリアさんの出生の地であるドイツのドレスデンに脚を運び、彼女の出生について調べます。当時のドイツはまだ東西が緊張していた時代だったため、図書館で調べることも容易ではありません。ドイツに住む友人に協力してもらい、マリアさんがどのように歩んできたのかを調べていきます。

マリアさんは、「地上絵は、天上の星座を写し取ったものではないか」という仮説をたて、人生のほぼ半分を砂漠で過ごし地上絵と向き合います。しかし、ある時点から研究結果を発表することより、地上絵の保護に力を注ぎました。その理由について楠田さんは、次のように語っています。

ひとつの答えを出すのではなくて、その謎に人々が向かい続けること、そして、そうした試みのなかで、いつか、古代人の表現しようと欲したあの一瞬を体感することこそが、重要なのだ。
マリアさんの行為や言葉によって、地上絵が大地と空と水をつなぐものへと、そして古代人と現代人をつなぐものへと導かれていきます。

『ナスカ気球探検』

昨日はナスカの地上絵の研究、保護を半生かけて行ったマリア・ライヘについて書かれた本を紹介しました。ナスカの地上絵についての本は数多くありますが、何のために、どうやって描かれたのかが、未だに分かっていません。それが、魅了される理由のひとつでもあるのですが。

マリアが提唱する暦法説や、宗教的儀式説、はたまた宇宙人説など、諸説ありまが、その中で「気球を作って描いたのでは」という説について述べられた本があります。

探検家のジム・ウッドマン著の『ナスカ気球探検』という本です。
ナスカの地上絵付近に、高熱で炊かれた焚き火の跡がある点、墓場で発見されたナスカ時代の布が気球に適している点、上空から見ないと地上絵の配置を決めることが難しい点、ナスカの織物の刺繍や土器の絵に気球に似たものがある点から、古代ナスカ人たちは気球を発明していて、飛ぶことによって計測や鑑賞をしていたと確信します。
現地の布を調べ、ナスカ人と似た素材、飛ばし方で再現するという記録が語られています。

マリアがなぜナスカの地上絵を保護する必要があったのか、それは宇宙人が地上絵を作ったのではないかという説が広まり、多くの人が車で押し寄せ、その跡によって地上絵が崩れていくからでした。ジム・ウッドマンは、この宇宙人説を徹底的に否定します。

ウッドマンが行った復元飛行の滞空時間は14分だったので、この時間で実際に地上絵の指示ができたのかは分かりませんが、皮膜、ゴンドラ、焚き火で気球を膨らます専門家(違う国や現地の老人、墓荒らしも含め)が集まり、それぞれの知恵を絞り合う向かう姿に引き込まれてしまいます。焚き火の火が気球に燃え移ったり、強風で引きずられたりなどの困難を乗り越え、ついにプロジェクトは成功します。