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アイディアの決め方(1)

昨日の続きになってしまうが、先日土曜日の話し合いで、最終的な決定案を出したのは、話し合い初期から参加している小学生だった。(中学3年生は高校入試があり、1月から参加できなくなってしまったため、小学生の意見が反映された)

振り返って思うと、9月頃の話し合いでは、小学生はとにかく進めようとし、僕らは「いやいや、まだ早いよ」と言い、決定を引っ張っていた。

ふくらむの企画の決め方として、多数決で決めたことはない。だから話し合い初期の小学生の、案を出し、そこから多数決で絞り込むといった進め方にはギャップがあった。もちろん、小学生はそのような決め方が「当たり前」なのだろう。

学校で行う、学級会、あるいはホームルームというクラス単位の話し合いでは、意見を出し、それらについて議論があり、多数決で決定するというセオリーがあるのだと思う。

今までなぜ、ふくらむが多数決で決めなかったかと考えると、多数決をするほど人数が多くないという要素も大きい。多数決の場合、一人の考えが大きく決定を左右してしまう。しかし、それ以上に、今までの話し合いで、「何か面白いアイディアが出た場合は、そのアイディアにおのずと引き寄せられる」という経験がある。

時間内で何かを決める場合、多数決というのは「より多くの人が同意した」ことが反映されるには違いない。しかし、個人の意見が反映されるためには、長い時間をかけ他者の意見と自分の考え、他者と他者の考えを混ぜる必要がある。その調合に時間がかかる。その過程を踏まえ「面白いアイディア」が出てくるのはないか、と思う。

長くなったので明日に続きます。

アイディアの決め方(2)

昨日の続き。

9月から話し合いを続けて、今月末にようやく企画内容が決定した。

決定を急いでいた小学生はじれったくて仕方なかったと思う。多数決で決めようとする進め方にブレーキをかけてきたのは、僕らのわがままでもある。

ただ、多数決で決めるということには、どうしても気が引けてしまう。「面白いアイディアを出す」のが目的だったはずが、「決めること」が目的になってしまうように思えるからだ。もちろん、話し合う時間が決められている中で、最終的に仕方なく決めなければならない場合は、多数決という手段をもって決めることは必要なのかもしれない。

しかし、決め方はそれだけではない。「これは面白い!」「これならやってもいいな」とそれぞれが思うアイディアが挙がれば、おのずとそのアイディアに向かっていく。

成功、あるいは経験した方法論があると、ついその方法だけに頼ってしまう。ふくらむの「決定を引っ張る」という方法も、失敗したこともある。

今回数ヶ月に及び、話し合いを続けてきたが、前回の話し合いで、小学生が「(話し合いの)考え方が変わった」と、ポロリと言った。正直、とても嬉しく思った。

気球の設計について(2)

『熱気球の浮力について』で述べたように、大きさを一定にした場合、最も表面積が少ない形が球体となる。

人が乗っている気球の形が雫を逆さまにしたような形な理由は、球体に重いものをぶら下げた場合、球体の下部にしわがより、自然に雫を逆さまにした形になってしまう。ならば、その設計の段階で、雫の形にしてしまえばいい、ということで「ティアドロップ」という形が普及している。

「人型」の気球の設計を考えていると、通常の気球には無い難しさに直面する。

■人体の形が表面積が大きいこと
人体のパーツは頭、胴体、手、足と分かれている。今回、足についてはスカートを履いているような形状だが、頭と手に関しては、内部の熱を急速に冷やしてしまう形になる。
体積を増やすため全体のサイズを大きくする方法もあるのだが、バーナーの熱量を考えると、頭に熱気が送られる前に冷えてしまう。また、作業量も増え、フライト時に風も受けやすくなる。

■曲面で出来ており、動きがあること
紙という平面素材で曲面を作るには、どうしてもポイントを増やさなければならない。例えば、立方体のポイントは8点だが、球体のポイントは増やそうと思えば無限に増やせてしまう。ポイントを増やすと、形は滑らかになるが、作業量が増える。的確なポイントを探すことが大事。
動物は基本的に左右対称だが、今回はつぼみを持っているという動作が加わる。頭だけ右を向けようとしても、自然と右肩が上がってしまうように、一部分を動かすと付随して別の部分に変化をつけないとマネキンのような不自然さが見えてしまう。

■力がかかりにくい形にすること
球体は、全ての形状が外側に膨らむ形となっていて、非常に安定している。しかし、人体は首や腕の付け根など、「凹む形」がある。気球内の空気は、より外側に膨らもうとする力が加わるので、凹んだ箇所に力が集まる。紙を素材としているので、力が集まると当然、破けてしまう。

まとめると、「大切な者を持っている」ということを保ちつつ、「つぼみを抱いた人体」を変形させるということになるだろう。

夕方になり突然の通り雨。

すぐに降り終え空を見上げると、地と地をつなぐ虹がかかっていた。

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さっきここを通った雨が、あのあたりに降っているんだろう。

完全な虹を見たのは、8年前に行った北海道以来かもしれない。
高速を使わず、下道で軽自動車と原チャで行った道中で見た。

たしか、あのときも通り雨だった。

模型の役割

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毎回、気球を作るときには模型を必ず作っている。

今回の模型の縮尺は100分の1。高さ18センチの模型なので、模型を基準に考えると、人の大きさは1.5センチ程度。

今はまだ真っ白な模型だが、これに補強ラインや、気球内に設置する照明を吊るすためのワイヤーの長さなどを書き込んでいく。

完成に近づき、気球の中で作業する大きさになると、自分がいる場所が分からなくなるときがある。そのときは、この模型が地図にもなる。

設計図の元でもあり、地図となる模型だが、最も活用されるのは、制作者がイメージを共有できることだと思う。

共同制作で大事にしているのは、一人ひとりが、今の自分がどこを作っているかを理解して手を動かしているかということだ。その理解がなくては、ただのレーン作業になってしまう。何を手がけたのか分からず、完成した気球を眺めるのでは、みんなで作る意味がない。

また、気球を飛ばしかたを話し合うときにも模型は重要な役割になっている。傾いたときにはどのロープを引っ張るのか、どのくらいの高さまで飛ばすのかなど、模型を手に取りながら話すと、とにかく分かりやすい。

模型は、制作者それぞれが考えていることを教えてくれる。

いつもギリギリ

限られた期間内で、気球の企画の決定にかける時間と、実際の制作時間をどのようにバランスをとるかという問題をいつも抱えている。

これまでに10以上の気球を作っているが、そのバランスの取り方は、未だに分からない。

週に1回程度の小中学生との話し合いで、それぞれが納得できる案を出すために、時間がかかることは仕方がない。

「このような気球を作ろう」と、企画を決定させることは、とても簡単なように思える。
重要なことは、制作に関わる人が、作りたいと熱意を覚える案を出すことだ。

企画を考えあぐねた末、「これは面白い!」と納得するアイディアが出るときは10分間に起こる。

奇跡のような10分間。その10分のために数時間の話し合う時間があるように思う。

また、完成した気球が飛んでいる時間も数分。この数分の間に、膨大な話し合いや制作の時間、その時間の中で交わされた言葉や関係性が集積しているのだと思う。