ふくらむロゴ

ポニョを見て、振り返り、飛ぶということ

先日、地上波では初めて宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』が放送されました。

『ポニョ』のストーリーについても述べたいことはたくさんあるのですが、やはりこのサイトでは飛ぶことについて注目したいと思います。

今まで宮崎駿が監督として描いた長編映画作品は

ルパン三世カリオストロの城(1979)
風の谷のナウシカ(1984)
天空の城ラピュタ(1986)
となりのトトロ(1988)
魔女の宅急便(1989)
紅の豚(1992)
もののけ姫(1997)
千と千尋の神隠し(2001)
ハウルの動く城(2004)
崖の上のポニョ(2008)

です。こうやってみると全作品に『の』がものの見事に入っています。(ちなみに高畑勳監督の作品には『ほ』という文字が入っています)

まぁ、それはさておき、宮崎駿作品と言えば、やはり『飛ぶ』ということが挙げられます。

『カリオストロ』ではクラリスのもとに行くために壮大なジャンプを見せます。
『ナウシカ』と『ラピュタ』『紅の豚』『魔女の宅急便』については言及するまでもないでしょう。
『トトロ』では駒に乗ったトトロにサツキとメイがしがみつき月明かりの中で風のように飛び回ります。
『もののけ姫』は地上から離れて飛ぶというより、タタラ場に乗り込むサンやサンのもとへと急ぐアシタカの瞬間的な飛行が印象的です。
『千と千尋の神隠し』ではハクの存在が分かったときに千尋とともに浮遊するラストシーンを迎え、『ハウルの動く城』ではハウルがソフィーに手を取り、空中を歩くシーンが思い出されます。

そして『ポニョ』では宗介がポニョが入ったバケツを持ちながらトキに飛ぶシーンです。アングルとしては『カリオストロ』と似た真横からの視点で自力で飛べる最大のギリギリの距離を飛び越えることを示しています。

飛ぶということについて宮崎駿がどのように思っているのか、ひとつの見解として『魔女の宅急便』の映画パンフレットから引用。

「いつも同じ目線では世界は変わらない。視点を変えると、ちがう世界が見えてくるんですね。たとえば、2階でも屋根でも登って見たっていいんです。学校や社会で、問題がグシャグシャになっている時に屋上に登ってみるとせいせいしますよ。この自分の足下の箱の中でグショグショしているだけなのかと思うとずい分立ちなおるんですよ。でもこの映画では空を飛ぶ憧れよりも、地上の生活に根をおろす事が大切になっています。」

と語っています。

終わりの一文で思い出されるのは、『ナウシカ』でナウシカがユパに言う「汚れているのは土なのです」や『ラピュタ』でシータがムスカに訴える「人間は土から離れて生きていけない」という言葉。『紅の豚』ではフィオを救う決闘(?)で最後には飛行機を降りて地上での殴り合いになる、などの名場面。

そう考えると、いつも大地を見せるために飛行を描いていたように思えます。日常を見慣れていない切り口で感じさせる視点、そのために非日常を視聴者には見せるのだけど、登場人物たちにとって飛んでいることが日常にも関わらず大地や土について語りかける。それが宮崎駿が言いたいことなのかなぁと思います。

コメント

コメントフォーム