記憶の種フライト当日
いつものように学校に集合する。風が強い。
天気は曇。フライト当日にして雨が降っていないのが幸いだがきになる風だ。木が大きく揺れるほど。風はどうすることもできない。
気球の制作はロープ以外ほぼ終わっていて、午前の主となる作業は会場のセッティング。来場者にメッセージを書いてもらうため、小体育館の会場作りを進める。会場案内や説明文を切って貼り合わせたり、机を運んだり、床にシートを敷いたりとさまざま。いつもは気球本体が出来てないことが多いので今回はかなりゆとりを感じる。
午前にほぼ会場作りは完成し、午後からはフライトの準備に入る。グラウンドの横にテントを建て、側面はネットを張ってヘリウム風船を膨らませるスペースを作る。午後、3時過ぎになっても風は一行に止む気配がない。
5時になり辺りはどんどん暗くなっていく。樹々を揺らす音はまだ聞こえてくる。来場者も増えてきて、仕方ない焦りが迫ってくる。ただ待つしかない。ゆっくり待つだけ。
翌日に延期することもできたのだが、翌日は今日よりも天候が悪化するという。そしてなにより、今日来てくれた人に申し訳ない。ということでフライト決行。ただし、少しでも風の影響を抑えるため、校舎近くの風が弱いところで行う。
6時半、準備を始める。気球を膨らます。中に電球を付けに入る。風であおられないように外側から押さえているたくさんの人の影が見える。バーナーを入れ、立ち上がったところで、メッセージが付けられた風船を一人ひとりが気球の中に入れていく。風船を入れるときに「うわっ、あったかい!」「風船いっぱいある!」という声が聞こえた。
テストフライトでも問題になっていた対流と強い風で気球が揺らされ、内部の風船がかき回されるように渦を巻く。バーナーで暖め風船を入れ、また暖めるのを繰り返し、全員が風船を入れ終わったのは19時を過ぎていた。バーナーを強め、中の空気を暖める。そのとき、パンッ!という音がし、メッセージが2通落ちてきた。上部が高温すぎて風船が割れたのだ。急いで新しい風船につけ直し、弱火で暖める。
浮力が回復し、風の隙間を見計らって離陸。予想通り少しでも飛ばすと気球は大きく揺れ始めた。暴れる気球にこっちが振り回されてしまう。バーナー口から中の風船も揺れているのが見える。そして気がつくとカウントダウンが始まっていた。
「・・・3、2、1、引っ張ってー」
引っ張ってもまったく破けなかったテストフライトの記憶が一瞬だけ横切る。しかし紙の擦れる大きな音とともに夜空が広がり、風船は吸い込まれるように昇っていった。
落ちてきた気球から這い出て空を見上げると風船たちは急ぐように南へと向かっていた。それを追いかける子どもたち、「バイバーイ!」と手を振る子どもたち。見えなくなっても見てしまう。空を見ながら今までを回想しつつ、風船がどこにいくのか想像する。終わったような始まったような、考えながらただただ立ち尽くす。
天気は曇。フライト当日にして雨が降っていないのが幸いだがきになる風だ。木が大きく揺れるほど。風はどうすることもできない。
気球の制作はロープ以外ほぼ終わっていて、午前の主となる作業は会場のセッティング。来場者にメッセージを書いてもらうため、小体育館の会場作りを進める。会場案内や説明文を切って貼り合わせたり、机を運んだり、床にシートを敷いたりとさまざま。いつもは気球本体が出来てないことが多いので今回はかなりゆとりを感じる。
午前にほぼ会場作りは完成し、午後からはフライトの準備に入る。グラウンドの横にテントを建て、側面はネットを張ってヘリウム風船を膨らませるスペースを作る。午後、3時過ぎになっても風は一行に止む気配がない。
5時になり辺りはどんどん暗くなっていく。樹々を揺らす音はまだ聞こえてくる。来場者も増えてきて、仕方ない焦りが迫ってくる。ただ待つしかない。ゆっくり待つだけ。
翌日に延期することもできたのだが、翌日は今日よりも天候が悪化するという。そしてなにより、今日来てくれた人に申し訳ない。ということでフライト決行。ただし、少しでも風の影響を抑えるため、校舎近くの風が弱いところで行う。
6時半、準備を始める。気球を膨らます。中に電球を付けに入る。風であおられないように外側から押さえているたくさんの人の影が見える。バーナーを入れ、立ち上がったところで、メッセージが付けられた風船を一人ひとりが気球の中に入れていく。風船を入れるときに「うわっ、あったかい!」「風船いっぱいある!」という声が聞こえた。
テストフライトでも問題になっていた対流と強い風で気球が揺らされ、内部の風船がかき回されるように渦を巻く。バーナーで暖め風船を入れ、また暖めるのを繰り返し、全員が風船を入れ終わったのは19時を過ぎていた。バーナーを強め、中の空気を暖める。そのとき、パンッ!という音がし、メッセージが2通落ちてきた。上部が高温すぎて風船が割れたのだ。急いで新しい風船につけ直し、弱火で暖める。
浮力が回復し、風の隙間を見計らって離陸。予想通り少しでも飛ばすと気球は大きく揺れ始めた。暴れる気球にこっちが振り回されてしまう。バーナー口から中の風船も揺れているのが見える。そして気がつくとカウントダウンが始まっていた。
「・・・3、2、1、引っ張ってー」
引っ張ってもまったく破けなかったテストフライトの記憶が一瞬だけ横切る。しかし紙の擦れる大きな音とともに夜空が広がり、風船は吸い込まれるように昇っていった。
落ちてきた気球から這い出て空を見上げると風船たちは急ぐように南へと向かっていた。それを追いかける子どもたち、「バイバーイ!」と手を振る子どもたち。見えなくなっても見てしまう。空を見ながら今までを回想しつつ、風船がどこにいくのか想像する。終わったような始まったような、考えながらただただ立ち尽くす。
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